HYROXのレース週の食事で軸になるのは、糖質(炭水化物)の量を落とさないことと、前日から当日は消化のしやすさを優先することの2つです。特別なサプリメントを足すより、いつもの食事の中で主食の比率を上げるほうが確実です。ここでは公的機関が公表している目安と、HYROXのルールブックに書かれた補給の制限をもとに、7日前から当日までの流れを並べます。
この記事の要点
- 糖質は1日に必要なエネルギーの6割以上が望ましいとされています(農畜産業振興機構)。
- 3,000kcalが必要な人なら、そのうち1,800kcal分、約450gが糖質の目安です。
- 競技の1〜2時間前に糖質100gをとると、無理なく消化できて筋グリコーゲンを満たせるとされています。
- 食事の基本形は主食・主菜・副菜・牛乳乳製品・果物の5つを毎食そろえることです(ハイパフォーマンススポーツセンター)。
- レース中の補給食はスタートから自分で携行する必要があり、エイドステーション以外から飲食物を受け取ると時間ペナルティの対象です。
HYROXにカーボローディングは必要か
結論から言うと、フルマラソンで行うような厳密なカーボローディングを、HYROXでそのまま真似する必要はありません。HYROXは1kmのランを8本と8種目を組み合わせた競技で、完走タイムは多くの人で60分〜120分程度に収まります。数時間走り続ける競技とはエネルギーの使い方が違います。
一方で、糖質が足りていない状態でスタートすると後半の失速が大きくなるのは共通です。農畜産業振興機構「スポーツと糖質〜アスリートの基本の食事〜」は、1日に必要なエネルギーの6割以上は炭水化物であることが望まれるとしています。3,000kcalが必要な人なら1,800kcal分、約450gが糖質の目安という計算例も示されています。
つまりレース週にやることは「糖質を一時的に爆盛りする」ことではなく、減量や糖質制限をしている人が、その制限をいったん外して通常の比率に戻すことだと考えるとわかりやすくなります。
レース週7日間の食事の組み立て
7〜4日前:練習量に合わせて量を戻す
この時期は練習量を落とし始める時期でもあります。練習が減った分だけ食事も減らしてしまうと、筋グリコーゲンが戻りきらないまま当日を迎えることになります。練習量は落としても、主食の量は落とさないのがこの数日の考え方です。

食事の形としては、ハイパフォーマンススポーツセンターの「アスリートの食事の基本」が示す主食・主菜・副菜・牛乳乳製品・果物の5つを毎食そろえる形が基準になります。特別な食材を足すより、そろっていない皿を埋めるほうが先です。
3〜2日前:主食の比率を上げる
この2日間で、主食(ごはん・パスタ・パン・うどん)の比率を少しだけ上げます。おかずを増やすのではなく、同じ献立のまま主食の量を1〜2割足すイメージです。揚げ物や脂の多いおかずを増やすと消化に時間がかかり、胃の重さとして残りやすくなります。
食物繊維の多い野菜や豆類を急に増やすのも、この時期はおすすめしません。普段から食べ慣れているものの中で、主食を増やす方向に寄せます。
前日:量より消化のしやすさ
前日の夕食は、量を増やすことより消化のしやすさを優先します。新しい店・新しいメニュー・生もの・辛いものは避け、普段食べ慣れているものにします。遠征で外食になる場合も、前日は冒険しないのが安全です。
寝る直前の食事は睡眠の質を下げることがあります。夕食は就寝の3時間前までに終えておくと、翌朝の胃の状態が安定しやすくなります。大会前の睡眠の整え方は直前期のテーパリングとあわせて考えると組み立てやすくなります。
当日朝から会場までの食事
当日はスタート時刻から逆算して決めます。
| タイミング | 内容 | ねらい |
|---|---|---|
| スタート3〜4時間前 | 主食中心の食事 | 消化を終わらせておく |
| スタート1〜2時間前 | 糖質100g程度の軽食 | 筋グリコーゲンを満たす |
| スタート直前 | 水分と必要なら少量のジェル | 口が乾かない状態にする |
農畜産業振興機構の解説では、競技の1〜2時間前であれば糖質100gを無理なく消化でき、筋グリコーゲンなどの筋肉のエネルギー源を満たせるとされています。おにぎり2個程度が目安になります。
HYROXは会期が長く、スタートが夕方になる日もあります。朝のスタートと夕方のスタートでは、この表の当てはめ方がまったく変わります。自分の出走時刻が確定してから逆算してください。
遠征で外食になるときの選び方
日本のHYROXは大規模な展示会場で行われるため、多くの人にとって遠征をともなう大会になります。自炊できない数日をどう乗り切るかは、レース週の食事の現実的な難所です。
前日の夕食はチェーン店でよい
前日は「おいしい店」ではなく「予想がつく店」を選びます。全国チェーンの定食屋やうどん店のように、どこで頼んでも同じものが出てくる店は前日向きです。主食を大盛りにして、揚げ物を単品で足さないだけで形になります。
当日朝はコンビニで組み立てられる
会場入りの朝は、おにぎり2個とバナナ、必要ならゼリー飲料という組み合わせで、前述の「1〜2時間前に糖質100g程度」に近い形が作れます。慣れないサンドイッチやパン類より、普段の練習日に食べているものと同じにするほうが安全です。
荷物に入れておくもの
宿で食べる分の主食(パックごはん・カステラなど日持ちするもの)を1食分だけ持っていくと、到着が遅れて店が閉まっていたときの保険になります。会場での持ち物は当日の受付と計測チップの記事とあわせて確認しておくと抜けが減ります。
レース中に持ち込める補給とルール
ここはルールブックに明記されている部分なので、感覚で判断しないほうがいい箇所です。

HYROX公式ルールブック(ダブルス・26/27シーズン版)の水分・補給の項には、次の内容が書かれています。
- 水はROXZONEを通過する前後のいずれかで、少なくとも1回は提供される。スポーツドリンクなどが用意されることもある。
- 補給食を使いたい人は、レースのスタートから自分の身につけて携行する必要がある。
- エイドステーション以外の誰かから飲料や補給食を受け取ることは認められない。これは「outside assistance(外部からの援助)」に当たり、違反ごとに時間ペナルティが科されることがある。
- 使い終わったジェルの包装や紙コップは指定のごみ箱へ。ROXZONEの床やランコースに捨てると、1回ごとに2分のペナルティになりうる。
つまり「応援に来た家族からジェルをもらう」は、やってはいけない行為です。使う予定のあるものは全部、スタート前に自分のポケットやベルトに入れておきます。コース上の水の扱いは給水ルールの記事で詳しく整理しています。
やりがちな3つの失敗
1つ目:前日に食べ慣れないものを食べる
遠征先のご当地グルメは大会の後に回すほうが安全です。

2つ目:当日の朝に食べなさすぎる
緊張で食欲がない場合でも、ゼリー飲料やバナナなど口に入るものを選び、完全に空腹でスタートしないようにします。
3つ目:当日に初めてのジェルを試す
合うかどうかは人によって違います。練習で一度も使っていない補給食を本番で初めて口にするのは避け、練習の通しセッションで試しておきます。水分と電解質の考え方は季節別の補給の記事にまとめています。
体質・持病がある場合の注意
ここで挙げた数字は、一般的な目安として公的機関が示しているものです。糖尿病などで食事管理を受けている人、食物アレルギーがある人、妊娠中の人、消化器に持病がある人は、医師や管理栄養士に相談してください。 当サイトは医学的な助言を行うものではありません。
体重を落としている途中の人も注意が必要です。減量とレース週の糖質確保は方向が逆になります。大会の直前期は減量を止めて、当日のエネルギーを優先するという判断が必要になる場面があります。
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よくある質問
Q1. HYROXでもカーボローディングは必要ですか。
フルマラソン向けの厳密な方法をそのまま行う必要はありません。糖質を1日のエネルギーの6割以上という通常の比率に戻し、レース週にそれを落とさないことのほうが現実的です。
Q2. 前日は何を食べればいいですか。
普段食べ慣れている主食中心の食事です。新しいメニュー・生もの・脂の多い料理は避け、就寝の3時間前までに終えるのが目安です。
Q3. 当日の朝は何時間前に食べればいいですか。
主食中心の食事はスタートの3〜4時間前に終え、1〜2時間前に糖質100g程度の軽食を足す形が目安です。出走時刻が夕方の日は、この逆算をその時刻に合わせてください。
Q4. レース中にジェルを持ち込めますか。
持ち込めますが、スタートから自分で携行する必要があります。途中で誰かから受け取ることは外部からの援助とみなされ、時間ペナルティの対象になります。
Q5. 応援に来た家族から飲み物をもらうのはだめですか。
認められていません。飲料や補給食を受け取れるのはエイドステーションだけです。
Q6. 減量中ですが大会前も続けていいですか。
減量とレース週の糖質確保は目的が逆になります。直前期は当日のエネルギーを優先する判断が必要になる場面があります。個別の事情がある場合は専門家に相談してください。
Q7. サプリメントは飲んだほうがいいですか。
食事がそろっていれば、サプリメントを足すことが前提にはなりません。使う場合も本番が初めてにならないよう、練習で試しておきます。
参考・出典
- スポーツと糖質〜アスリートの基本の食事〜(独立行政法人農畜産業振興機構)
- アスリートの食事の基本(ハイパフォーマンススポーツセンター/日本スポーツ振興センター)
- HYROX RULEBOOK DOUBLES SEASON 26/27(HYROX公式・PDF)
- HYROX Rulebook(HYROX公式)
最終更新日:2026年9月24日
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