HYROXの練習を積むうえで、睡眠は「余裕があれば整えるもの」ではなく、練習量と同じ列に置くべき要素です。厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023は、成人について6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することを推奨しています。このページでは、その公的な目安をHYROXの練習期と大会週にどう当てはめるかを整理します。
この記事の要点
- 成人の目安は「適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」です。
- 時間と同じくらい、睡眠で休養がとれている感覚(睡眠休養感)を高めることが重視されています。
- カフェインは1日の摂取量合計が400mgを超えないようにすることが推奨されています。
- 休日の寝だめは、平日6時間未満の人では効果が期待できないという報告が紹介されています。
- 大会前は前日1晩よりも、その前の数日の睡眠をそろえるほうが現実的です。
まず押さえる公的な目安:成人は6時間以上
睡眠ガイド2023の成人版は、次の3点を推奨事項として挙げています。
- 適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する。
- 食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。
- 睡眠の不調・睡眠休養感の低下がある場合は、生活習慣等の改善を図ることが重要であるが、病気が潜んでいる可能性にも留意する。
同ガイドによれば、令和元年の国民健康・栄養調査で1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は男性37.5%、女性40.6%でした。睡眠で休養がとれている人の割合はおおよそ8割程度で、20歳以上の成人では7割程度と低くなっています。練習を増やす前に、まず6時間を割っていないかを確認するのが順番として先です。
大会前1週間の睡眠の整え方
前日より「前日の前日」が効く
大会前夜は緊張で寝つけないことがあります。ここを完璧にしようとするより、2〜3日前までの睡眠をそろえておくほうが現実的です。前夜に多少眠れなくても、その前の数日で足りていれば当日の体感は大きく崩れません。

起床時刻を先に決める
HYROXは会期が長く、出走が朝早い日も夕方の日もあります。自分のスタート時刻が確定したら、当日の起床時刻から逆算して、数日前から同じ時刻に起きるようにします。就寝時刻より起床時刻を固定するほうが、体内時計はそろいやすくなります。
朝のスタートなら、前々日あたりから起床を早めます。夕方のスタートなら無理に早起きする必要はなく、いつもどおりの時刻で構いません。当日のタイムラインの組み立ては直前期のテーパリングとあわせて考えると整理しやすくなります。
遠征先の寝床は「いつもに近い」を優先する
遠征では枕・室温・光・音が普段と変わります。睡眠ガイド2023も、光・温度・音といった環境因子を良い睡眠の要素として挙げています。持っていける範囲で普段使っているものに寄せるのが対策になります。アイマスク、耳栓、普段の枕カバーあたりは荷物としても軽く済みます。
到着が深夜になる移動計画は、それ自体が睡眠時間を削ります。前泊するかどうかは、宿代だけでなく当日の睡眠時間がどれだけ確保できるかで判断すると決めやすくなります。
睡眠休養感を下げている生活習慣
睡眠ガイド2023は、睡眠休養感を低下させる要因として、睡眠不足のほか、日中のストレス、就寝直前の夕食や夜食、朝食抜きなどの食習慣の乱れ、運動不足などを挙げています。練習量が多い人でも、食事の時間帯が遅いだけで休養感は下がりえます。

カフェインは1日400mgまで
睡眠ガイド2023は、1日のカフェインの摂取量合計は400mgを超えないようにとしています。カフェインには覚醒作用があり、寝つきの悪化や中途覚醒の増加、眠りの質の低下につながる可能性があると説明されています。カフェインの代謝には個人差があるとも書かれており、同じ量でも影響の出方は人によって違います。
HYROXの練習では、プレワークアウト系のサプリメントや、カフェイン入りのジェルを使う人もいます。夕方以降の練習でこれらを使うと、その日の睡眠に影響が出る可能性があるという関係は知っておく価値があります。含有量は製品表示で確認してください。
寝酒と喫煙
ガイドでは、アルコールは睡眠の質を悪化させる可能性があること、ニコチンを含むもの(紙巻きたばこ、加熱式たばこ等)も睡眠の質を悪化させる可能性があることが示されています。過度の飲酒や睡眠薬代わりの寝酒は、入眠困難や中途覚醒を引き起こすとされています。
大会が終わった夜に打ち上げをするのは自由ですが、翌日の移動や次の練習までの回復を早めたいなら、量とタイミングは意識する意味があります。
休日の寝だめは回復になるか
平日に足りない分を休日にまとめて寝る、いわゆる寝だめについて、睡眠ガイド2023は明確な整理をしています。
- 40〜64歳の成人を対象とした調査では、平日6時間以上寝ている人に限り、休日の1時間程度の寝だめは寿命短縮リスクを低下させることが示されています。
- 一方、平日6時間未満の人は、休日に寝だめをしても寿命短縮リスクが有意に高まると報告されています。
- 平日6時間以上寝ていても、休日に2時間以上の寝だめ習慣がある人では、リスクの軽減がみられないとされています。
- 休日に長時間の睡眠が必要な場合は、平日の睡眠時間が不足しているサインであるとされています。
練習に当てはめると、平日を削って土日にまとめて寝る運用は、回復の手段としては当てにしにくいということになります。平日の就寝時刻を30分早めるほうが、休日に2時間多く寝るより効きます。
練習量が増えた時期に最初に削られるもの
HYROXの準備を始めると、走る量と筋力トレーニングの両方を入れることになります。仕事や家事の時間は変わらないので、増やした練習時間はどこかから持ってくるしかありません。多くの場合、最初に削られるのが睡眠です。
「練習を足す」より「時間の総量」から考える
週4回の練習を週5回にするとき、増える1回分をどこに入れるかを先に決めます。朝を早めるなら就寝も早める、夜に入れるなら食事とカフェインの時刻を前倒しする、という形で睡眠を削らない置き方があるかを先に確認します。置き場所がないなら、その週は練習を足さないという判断もあります。
睡眠が足りない週の練習の扱い
睡眠が明らかに足りていない週に、強度の高いインターバルや重い重量のスレッド練習を重ねると、翌日の疲労が長引きやすくなります。そういう週は、通しシミュレーションのような強い1回ではなく、フォームの確認やイージーランに振り替えるほうが、結果として週の総量を落とさずに済みます。
記録をつけると判断しやすい
就寝時刻・起床時刻・朝の体感を練習記録に1行足すだけで、失速した練習の前の晩に何があったかが後から見えるようになります。出場する区分によって必要な練習量は変わるため、自分の記録で判断できる状態にしておくと調整が早くなります。
レース後の睡眠
HYROXの後は、筋肉の張りや興奮でかえって眠りにくくなることがあります。当日にできることは限られますが、寝室を暗くする、就寝直前の夜食を避ける、眠るための飲酒を避けるといった点は、睡眠ガイドが挙げている基本と同じです。

レース後の筋肉痛や動きの戻し方はレース後リカバリー完全ガイドに、水分と電解質の考え方は季節別の補給の記事にまとめています。睡眠はそれらと並ぶ回復の柱で、どれか1つで代替できるものではありません。
受診を考えるサイン
睡眠ガイド2023は、睡眠の不調や睡眠休養感の低下がある場合、生活習慣の改善を図ることが重要だとしたうえで、病気が潜んでいる可能性にも留意することを推奨しています。生活習慣を見直しても休養感が戻らない場合や、いびき・日中の強い眠気が続く場合は、自己判断で対処を続けずに医療機関に相談してください。
当サイトは医学的な助言を行うものではありません。持病がある人、服薬中の人、妊娠中の人は、練習計画と睡眠の調整について主治医に相談したうえで進めてください。
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よくある質問
Q1. HYROXの前日は何時間眠ればいいですか。
公的な目安は成人で6時間以上です。ただし前夜1晩で決まるものではないため、2〜3日前までの睡眠をそろえておくほうが確実です。
Q2. 前日に眠れませんでした。走らないほうがいいですか。
一晩眠れなかったことだけを理由に出走の可否を判断する材料は、公的なガイドには示されていません。体調に不安がある場合は無理をせず、会場の医療スタッフに相談してください。
Q3. カフェインはどれくらいまで大丈夫ですか。
睡眠ガイド2023は1日の摂取量合計が400mgを超えないようにすることを推奨しています。代謝には個人差があるとも書かれています。
Q4. 夜に練習すると眠れません。どうすればいいですか。
就寝直前の夜食や、眠るための飲酒は睡眠休養感を下げる要因として挙げられています。練習後の食事を早めることと、カフェイン入りサプリメントの時刻を見直すことから試してください。
Q5. 平日5時間睡眠で土日に10時間寝ています。これで足りますか。
睡眠ガイド2023では、平日6時間未満の人は休日に寝だめをしても寿命短縮リスクが有意に高まると報告されています。平日の睡眠時間そのものを見直すことが先になります。
Q6. 遠征の前泊は必要ですか。
当日の睡眠時間がどれだけ確保できるかで判断します。到着が深夜になる移動計画は睡眠時間を直接削ります。
Q7. 睡眠時間は足りているのに疲れが取れません。
睡眠ガイド2023は、時間だけでなく睡眠休養感を高めることを推奨しています。生活習慣を見直しても改善しない場合は、病気が潜んでいる可能性にも留意するとされており、医療機関への相談が選択肢になります。
参考・出典
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省・PDF)
- 健康づくりのための睡眠指針・睡眠ガイド(厚生労働省)
- アスリートの食事の基本(ハイパフォーマンススポーツセンター/日本スポーツ振興センター)
- レースを探す(HYROX公式)
最終更新日:2026年9月24日
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