この記事の要点
- 必要な水分量を決める最も確かな方法は、運動の前と後に体重を測ることです。日本スポーツ協会は、体重減少が2%以内になるように水分をとるよう示しています。
- 汗を多くかく場面では塩分の補給も必要です。同協会は0.1〜0.2%程度の食塩水(水1リットルに食塩1〜2g)が適当としています。
- 休憩は30分に1回以上とり、こまめに飲むのが目安です。冷たい水は深部体温を下げ、胃にとどまる時間が短いという利点があります。
- 冬の大会でも脱水は起きます。喉の渇きを感じにくく、厚着と暖房で汗をかくためです。1月開催の大阪大会は屋内であり、「寒いから水は要らない」は成立しません。
- レース中の水はエイドステーションで提供されますが、体にかけるなど冷却目的で使うと違反ごとに2分のペナルティです。ルールは事前に押さえておいてください。
自分に必要な量は、体重を測れば分かる
水分補給の話は「1日2リットル」のような一般論になりがちですが、必要量は体格・発汗量・環境で大きく変わります。日本スポーツ協会の熱中症予防に関する解説では、最適な水分摂取量を決める最も良い方法は運動の前と後に体重を測ることであり、運動前後の体重減少が2%以内になるように水分をとる、と示されています。

手順は単純です。
- 練習前に、できるだけ薄着で体重を測る。
- 練習中に飲んだ量を記録する(ボトルの残量で構いません)。
- 練習後に、汗を拭いて同じ条件で体重を測る。
- 減った体重が、体重の2%を超えていないか確認する。
体重70kgなら2%は1.4kgです。90分の通し練習で2kg減っていたら、飲んだ量が足りていないということになります。この数字は一度測れば自分の基準になります。季節が変わったら測り直す、という運用で十分です。
何を飲むか:濃度で決める
水だけを大量に飲むと、汗で失った塩分が補われません。日本スポーツ協会は、汗を多くかく場合には塩分の補給も必要であり、0.1〜0.2%程度の食塩水(1リットルの水に1〜2gの食塩)が適当としています。

市販の飲料を選ぶときは、成分表示のナトリウム量で判断できます。0.1〜0.2%の食塩水は、100mLあたりナトリウム40〜80mgに相当します。エネルギー補給も兼ねるなら糖質を含むものが選ばれ、同協会の資料では4〜8%程度の糖質濃度が挙げられています。
温度にも触れられています。冷たい水には、深部体温を下げる効果があること、胃にとどまる時間が短く吸収されやすいことの2つの利点があるとされています。
| 場面 | 選ぶもの | 理由 |
|---|---|---|
| 60分以内の軽い練習 | 水で足りることが多い | 発汗量が少なく、塩分の損失も限定的 |
| 90分以上の通し練習 | 0.1〜0.2%の食塩相当を含む飲料 | 汗で失う塩分を補う |
| 大会当日 | 練習で試した飲料 | 初めての銘柄を本番で使わない |
冬の大会で水分が足りなくなる3つの理由
HYROXの日本大会には冬の開催があります。BYD HYROX大阪2027は2027年1月21〜25日の開催が公式に案内されています(日程は公式サイトで確認してください)。「冬だから水分は少なくていい」と考えると、次の3点で足をすくわれます。

理由1:喉の渇きを感じにくい
気温が低いと渇きの感覚が鈍り、飲む回数が自然に減ります。夏と同じだけ汗をかいていても、飲む量だけが減ります。
理由2:厚着と暖房で汗をかいている
会場入りしてからウォームアップまで、屋内で上着を着たまま過ごす時間があります。その間の発汗は自覚されにくく、スタート前にすでに水分が減っている状態になりえます。
理由3:空気が乾燥している
冬は屋内も乾燥します。呼気から失われる水分も増えます。
対策は難しくありません。「渇いたら飲む」をやめて、時刻で飲むことです。会場到着からスタートまでの間に、30分ごとに一口ずつ飲む、と決めておけば感覚に依存しません。
夏との違いを一覧にする
| 項目 | 夏の大会 | 冬の大会 |
|---|---|---|
| 渇きの感覚 | 強く出る | 出にくい |
| 飲むきっかけ | 感覚でよい | 時刻で決める |
| 主なリスク | 暑熱によるトラブル | 気づかない脱水と、着込みすぎによる発汗 |
| 会場での服装 | 脱ぎやすさ優先 | ウォームアップ後に一枚脱ぐ前提で組む |
夏大会の暑熱そのものの対策は夏大会の暑熱対策|暑熱順化と当日の冷却・水分戦略で扱っています。この記事は季節を問わない水分と電解質の設計に絞っています。
練習日の飲み方を決めておく
大会当日だけ意識しても、体は慣れていません。練習日に次の3つを固定しておきます。
- ボトルの容量を決める。 500mLか750mLか。容量が決まっていれば、飲んだ量が記録になります。
- 飲むタイミングを決める。 種目と種目の合間、あるいは20〜30分ごとなど。日本スポーツ協会は暑いときの休憩を30分に1回以上とるよう示しています。
- 飲みながら動けるかを試す。 飲んだ直後に走ると気持ち悪くなる人がいます。量と間隔は練習で調整しておきます。

飲んだ量と体重の増減を数回記録すれば、自分の発汗量の傾向が見えてきます。記録の付け方はHYROXの練習記録テンプレートも参考になります。
大会当日は「ルールの範囲でしか飲めない」
当日の飲み方は、自分の計画だけでは決まりません。HYROXの26/27シーズン シングルス用ルールブックには次の内容が定められています。
- レース中、ROXZONEを通過する前後または通過中に、少なくとも1回は水が提供される。スポーツドリンクなどの補給用飲料が用意される場合もある。
- 補給食をとりたい人は、スタート時点から自分の身につけて持ち運ぶ必要がある。
- エイドステーション以外の誰からも、飲料や補給食を受け取ってはならない。外部からの援助として扱われ、違反ごとに時間ペナルティが科されうる。
- エイドステーションで提供される水分は飲用に限られ、頭や体にかけるといった冷却に使ってはならない。滑って危険なためで、違反ごとに2分のペナルティが科されます。
- 紙コップやジェルの空袋を所定のゴミ箱以外に捨てた場合も、違反ごとに2分のペナルティです。

つまり、当日に飲める量は会場の運用に左右されるということです。自分の電解質飲料をどうしても使いたいなら、スタート時点から身につけて持つしかありません。持てる量と、走りながら邪魔にならないかを練習で確認しておいてください。給水まわりのルール全体はHYROXの給水ルールにまとめています。
水分と電解質でやりがちな失敗
- 前日に大量の水を飲んで終わり。 前日の一気飲みは尿になって出ていきます。分けて飲むほうが残ります。
- 水だけで通す。 汗を多くかく場面では塩分が要ります。濃度の目安は0.1〜0.2%です(日本スポーツ協会)。
- 初めての電解質タブレットを本番で使う。 胃腸との相性は個人差が大きい部分です。練習で試してください。
- 冬だからと会場で何も飲まない。 渇きが出ないことと、失っていないことは別です。
- エイドの水を体にかける。 ルールブックでは違反ごとに2分のペナルティです。冷却が必要なら別の方法を用意してください。
1日の中での配り方を決める
練習中の飲み方だけを整えても、1日の総量が足りていなければ体は乾いたままです。時間帯で割り振ってしまうほうが、結果として続きます。
| 時間帯 | やること |
|---|---|
| 起床直後 | コップ1杯。就寝中に失ったぶんを戻す |
| 日中 | 手元にボトルを置き、空になったら足す。量を可視化する |
| 練習前 | 直前の一気飲みは避け、1〜2時間前から分けて飲む |
| 練習中 | 決めた間隔で飲む。日本スポーツ協会は暑いときの休憩を30分に1回以上としている |
| 練習後 | 体重の減り方を見て、足りない量を足す |
| 就寝前 | 多量に飲むと睡眠が分断される。量は控えめに |
可視化が効きます。「今日はどれだけ飲んだか」が分からない状態では、増やしようがありません。ボトルの容量を決めて本数で数えるだけで、判断できるようになります。
注意したいのは、とりすぎも問題になりうることです。塩分を含まない水だけを極端に大量に飲む運用は勧められません。日本スポーツ協会が示す濃度の目安(0.1〜0.2%の食塩相当)と、体重の減り方という2つの物差しを両方見てください。腎臓や心臓の疾患があるなど、水分・塩分の摂取量に制限がある場合は、主治医の指示に従ってください。
よくある質問
Q1. 1回にどれくらい飲めばいいですか?
一律の正解はありません。運動前後の体重減少が2%以内に収まる量が目安です。自分の発汗量を練習で測るのが最短です。
Q2. 塩分はタブレットでもいいですか?
形状は問いません。重要なのは濃度と量です。飲料に含まれる量とタブレットの量を合算して、とりすぎにならないようにしてください。塩分制限がある場合は医師に相談してください。
Q3. 冬でもスポーツドリンクは要りますか?
発汗があるなら必要です。屋内会場で厚着をしていれば、冬でも汗はかきます。渇きの感覚に頼らず、時刻で飲む運用に切り替えてください。
Q4. レース中に自分のボトルを置いておけますか?
補給食や飲料は、スタート時点から身につけて持ち運ぶ必要があると規定されています。途中で誰かから受け取ることはできません。運用の詳細は大会ごとに確認してください。
Q5. 水を頭からかけて冷やしたいのですが。
エイドステーションで提供される水分は飲用に限られ、冷却目的での使用は違反ごとに2分のペナルティと定められています。
Q6. 体重が2%以上減っていました。どうすればいいですか?
次の練習で、飲む量か飲む回数を増やして測り直してください。体調に不安がある、めまいや強い倦怠感があるなどの症状があるときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
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参考・出典
- 日本スポーツ協会「熱中症を防ごう」(水分補給の目安・体重減少2%以内・0.1〜0.2%の食塩水)
- 日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」
- 環境省 熱中症環境保健マニュアル(運動・スポーツ活動時の注意事項)
- HYROX Singles Rulebook Season 26/27(PDF・HYDRATION/NUTRITION、罰則規定)
最終更新日: 2026年9月23日
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