HYROXのアンチ・ドーピング規定とは、公式ルールブックのシングルス版9章「アンチ・ドーピング・コード」と、同じ配布ページからダウンロードできる別冊のHYROXアンチ・ドーピング規程(HYROX-ADC)の2つで構成されるルールです。
結論から言うと、HYROXに出るすべての選手は、レース中とレース外の両方で禁止物質の検査に応じることに同意したものとして扱われます。持病の薬などで禁止物質を使う必要がある人は、TUE(治療使用特例)をレースの28日前までに提出できると9章に書かれています。検査はエリートだけの話ではなく、HYROXはいつでも無作為検査を行う権利を留保しています。
この記事の要点

- ルールブック9章は、参加するすべての選手が主催者のアンチ・ドーピング規則に従うこと、レース内外で禁止物質の検査に応じることを求めている(公式ルールブック9章)
- TUE(治療使用特例)はレースの28日前までに提出できる。HYROXはいつでも無作為検査を行う権利を留保する(同)
- 別冊のHYROX-ADCは全27ページ・21条で、世界アンチ・ドーピング規程(WADC 2021)とドイツのNADAの規程をもとに作られている(HYROX-ADC序文)
- 禁止物質・禁止方法はWADAの禁止表に従う。TUEの申請様式はWADAの様式とHYROX独自の様式の両方が使える(同 4条)
- 制裁には資格停止のほか、アスリートライセンスの取り消しや大会への立入禁止が追加されうる。決定には不服申立ての条項がある(同 10条・13条)
- 日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は、主催団体の規則を確認して事前にTUEを申請するよう案内している(JADA TUEのページ)
対象読者
持病の薬や吸入薬を使っていて申込前に不安がある人、Pro区分や世界選手権の出場枠を狙っていて検査の可能性を知りたい人、家族に「ドーピング検査はあるのか」と聞かれた人です。ルールブックの探し方はHYROX公式ルールブックの読み方と確認場所、エリートの制度はHYROXアスリートライセンスとはで扱っています。HYROXの全体像はハイロックス(HYROX)とはを参照してください。
本記事は公式文書の整理であり、薬の使用可否の医学的な判断はできません。薬については医師と薬剤師に相談してください。
読了後にできること
自分が「検査の対象になりうる」ことを前提に、使っている薬が禁止表に当たるかを確認する手順と、当たる場合にTUEを28日前までに出す段取りを組めます。
ルールブック9章が定めていること

公式ルールブックのシングルス版9章は短い章ですが、要旨として次の5点を定めています。
- HYROXはすべての大会でフェアプレーと競技の精神を掲げ、禁止物質・禁止方法に対して寛容度ゼロで臨む
- HYROXの大会に参加するすべての選手は、主催者のアンチ・ドーピング規則に従うことが求められる
- これには、レース中とレース外の両方で禁止物質の検査に応じることが含まれる
- TUE(治療使用特例)は、レースの28日前までに提出できる
- HYROXはいつでも無作為検査を行う権利を留保する
規程本文とTUE申請書はルールブックの配布ページから取得します。ダブルス版とリレー版にも同じ趣旨の章があります。
別冊HYROX-ADCの構成|WADCをもとにした27ページ
HYROX-ADCは全27ページで、序文に「世界アンチ・ドーピング規程(WADC 2021)と、ドイツ国内アンチ・ドーピング機構(NADA)の規程(NADC 2021)をもとにしている」と書かれています。条文の構成は次のとおりです。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 1〜3条 | ドーピングの定義、違反の類型、立証 |
| 4条 | 禁止表(WADAの禁止表に従う)、TUE |
| 5〜8条 | 検査と調査、検体の分析、審理前手続、B検体の分析 |
| 9〜10条 | 個人成績の自動失効、個人への制裁 |
| 12〜13条 | 懲戒手続、不服申立て |
| 14〜21条 | 情報と守秘、決定の実施、時効、教育、解釈、最終規定 |
違反の類型と改定の予定
違反の類型はWADCと同じ枠組みで、検体からの禁止物質の検出だけでなく、使用・使用の企て、所持、検体採取の拒否などが含まれます。序文には、WADCが2027年1月1日付で改定されるため、HYROX-ADCも改定される予定である旨も書かれています。2026年9月18日時点の版で確認していますので、最新版は配布ページで確かめてください。
TUE(治療使用特例)の出し方と期限

TUEとは、治療のために禁止物質・禁止方法を使う必要がある選手が、事前に申請して認められれば違反にならない仕組みです。JADAのTUEのページは、TUEは事前に申請する必要があること、主催団体が指定する様式と窓口に申請すること、有効なTUEは一つの組織からのみ取得することを案内しています。
HYROXでの流れ
HYROXでの流れは次のとおりです。
- 使っている薬が禁止表に当たるかを確認する。HYROX-ADC 4条は、禁止表としてWADAの禁止表を用いると定めています。WADAの禁止表で成分を確認し、判断に迷う場合は医師と薬剤師に相談します
- 申請書を用意する。HYROX-ADC 4.4条は、WADAの様式(wada-ama.org)とHYROX独自の様式の両方を認めています。HYROXの様式はルールブック配布ページにあります
- レースの28日前までに提出する。ルールブック9章の期限です。申請先はHYROX-World(HYROX-ADC 4.4.2条)
- 承認の可否を確認する。HYROX-ADCには、他の組織が付与したTUEの承認を審査し、基準を満たさないと判断した場合は理由を付して選手へ通知する、という条項もあります
確認項目のまとめ
| 確認項目 | 出典 |
|---|---|
| 禁止物質かどうか | WADAの禁止表(HYROX-ADC 4条) |
| 申請様式 | WADAの様式またはHYROX独自の様式(HYROX-ADC 4.4条) |
| 提出期限 | レースの28日前まで(ルールブック9章) |
| 提出先 | HYROX-World(HYROX-ADC 4.4.2条) |
申請の要件は個別の症状と薬によって変わります。本記事では「いつまでに、どこへ、何を」の枠組みだけを扱い、承認の見込みには触れません。
検査から制裁、不服申立てまで

HYROX-ADCの5条は、検査と調査は「国際基準(検査及びドーピング調査に関する国際基準)に従って行う」と定めています。流れを条文の順に並べます。
- 検査。レース中とレース外の両方で行われうる。暫定的資格停止中や資格停止中の選手もレース外で検査されうる(5条)
- 検体の分析。A検体で検出された場合、B検体の分析で確認する手続きがある(6条・8条)
- 成績の失効。違反があったレースの個人成績は自動的に失効する(9条)
- 制裁。資格停止などのほか、競技委員会(Competition Committee)の裁量でアスリートライセンスの取り消しや大会への立入禁止を追加できる(10条)
- 懲戒手続と不服申立て。手続はHYROX-Worldが所管し、決定には不服申立ての規定がある(12条・13条)
制裁の枠組み
制裁の枠組みはWADCに準じつつ、序文と10条の注記には、個別事情をより考慮する方向で調整している旨が書かれています。制裁の期間は事案ごとに決まるため、本記事では具体的な年数を書きません。
エリートの制度ではライセンスが前提になるため、ライセンスの取り消しは実質的にエリート参加の停止を意味します。制度の全体はHYROXエリートシリーズとはで扱っています。
申込前に持病の薬がある人が確認する順番

- 薬の成分名を控える(商品名ではなく成分名)
- WADAの禁止表で成分を照合する
- 当たる可能性があれば、医師と薬剤師に相談し、TUE申請の要否を確認する
- 申請するなら、レースの28日前から逆算して準備を始める
- 申請の控えと医師の書類を大会当日まで手元に置く
「一般参加のOpenだから検査はない」という前提は、ルールブック9章の文言(すべての選手・いつでも無作為検査)とは合いません。持病の薬がある人は、区分にかかわらず確認しておくのが安全です。
よくある質問
Q. HYROXにドーピング検査はありますか。
ルールブック9章は、すべての選手がレース内外で検査に応じること、HYROXがいつでも無作為検査を行う権利を留保することを定めています。実施の有無は大会ごとに公表されません。
Q. Open区分でも検査の対象になりますか。
9章は区分を限定していません。参加するすべての選手が対象です。
Q. TUEはいつまでに出せばよいですか。
ルールブック9章は「レースの28日前まで」としています。
Q. 禁止物質かどうかはどこで調べますか。
HYROX-ADC 4条はWADAの禁止表を用いると定めています。成分名で照合し、判断に迷う場合は医師と薬剤師に相談してください。
Q. TUEの申請書はどれを使いますか。
WADAの様式とHYROX独自の様式の両方が認められています。HYROXの様式はルールブック配布ページにあります。
Q. 違反するとどうなりますか。
そのレースの個人成績は失効し、資格停止などの制裁のほか、ライセンスの取り消しや大会への立入禁止が追加されることがあります。決定には不服申立ての規定があります。
Q. JADAの手続きとHYROXの手続きは同じですか。
JADAは、主催団体の規則と様式に従って事前に申請すること、TUEは一つの組織からのみ取得することを案内しています。HYROXの大会ではHYROX-ADCの手続きを確認してください。
参考・出典
- HYROX 公式ルールブック配布ページ(シングルス版9章・TUE申請書)(検査に応じる義務、TUEの28日前、無作為検査、2026年9月18日確認)
- HYROX Anti-Doping Code(HYROX-ADC・PDF)(27ページ・21条の構成、WADC 2021とNADCを基礎とする序文、4.4条TUE、5条検査、10条制裁、13条不服申立て、2026年9月18日確認)
- TUE(治療使用特例)|日本アンチ・ドーピング機構(JADA)(事前申請、主催団体の規則と様式に従うこと、TUEは一つの組織からのみ、2026年9月18日確認)
- Prohibited List|World Anti-Doping Agency(WADA)(禁止表、2026年9月18日確認)
最終更新日: 2026年9月18日
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