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マラソン経験者のHYROX練習プラン|4フェーズの組み立て

マラソン経験者のHYROX練習プラン|4フェーズの組み立て

マラソン経験者向けのHYROX練習プランとは、フルマラソンを走り切れる有酸素の土台をすでに持っている人が、不足している筋力・グリップ・複合疲労下の走りを4つのフェーズで積み上げるための設計です。走力を伸ばす計画ではありません。

結論から書きます。マラソン経験者がHYROXでつまずくのは、8kmのランではなく8つの種目のほうです。特にスレッドプッシュとスレッドプルは、長距離走が積極的に鍛えない「押す力・引く力・握力」を要求します。そのため計画の前半は走行距離をむしろ落として筋力を入れます(期間の割り方は後述)。ここを飛ばして週の後半にスレッドを足すだけの計画にすると、本番でソリが動かないという結果になります。

この記事の要点

  • ランは全区分共通で1km×8本。距離を伸ばす必要はなく、落ちないように刻む練習に切り替える
  • マラソン経験者の穴は押す力・引く力・グリップ・スクワット動作の4つに集中している
  • 16週間は「筋力導入6週→種目特異5週→レース特異3週→調整2週」の4フェーズで組む
  • 第1フェーズでは週の走行距離を普段の6〜7割まで落として、筋力セッションを週2回入れる
  • ランの直後に種目を行うブリック練習は第2フェーズから。最初から入れると筋力が伸びない

対象読者

フルマラソンを完走した経験があり、HYROXは初挑戦か1回目の反省を踏まえて組み直したい人。

読了後にできること

本番までの16週間を4つのフェーズに割り、各週で「走る量」と「持つ量」をどちらに寄せるかを決められます。

なぜマラソン経験者には16週間なのか

すでに公開している週数別のプランと使い分けてください。長ければ良いという話ではなく、埋めるべき穴の種類で選ぶものです。

プラン 主な対象 埋める穴 走行距離の扱い
8週間 期日が迫っている初挑戦者 種目の動作を覚える 現状維持
10週間 完走済みで1時間40分切りを狙う人 弱点種目の特定と補強 現状維持
12週間 土台から積み直したい人 全体のバランス ゆるやかに増やす
16週間 フルマラソン経験があるが筋力が薄い人 押す力・引く力・グリップ 前半で一度落とす

16週間が必要になる理由は単純で、筋力は有酸素能力より変化が遅いからです。走る側は数週間で戻りますが、152kgのソリを押し切れる力は数週間では作れません。だから前半に時間を取ります。土台から積む一般的な組み方は12週間プラン、期日が近い場合は中級者向け10週間プランを見てください。競技の全体像はHYROXとはにあります。

週数別プランの使い分け
週数別プランの使い分け

マラソン経験者の強みと穴

自分の現在地を正しく見積もるところから始めます。

能力 マラソン経験者の状態 HYROXでの要求
有酸素持久力 十分にある 1km×8本を落とさず刻む
押す力 鍛えていない スレッドプッシュ4×12.5m(男子オープン152kg・ソリ込み)
引く力 鍛えていない スレッドプル4×12.5m(男子オープン103kg・ソリ込み)
グリップ ほぼ使っていない ファーマーズキャリー200m(男子オープン2×24kg)
スクワット動作 可動域が狭いことが多い ウォールボール100回(男子オープン6kg)
上半身の持久力 弱い スキーエルグ1000m・ローイング1000m

重量はシングル公式ルールブック26/27の区分表によるものです(2026年9月8日確認・女子オープンはスレッドプッシュ102kg、スレッドプル78kg、ファーマーズキャリー2×16kg、ウォールボール4kg)。

穴は4つに集中しています。押す・引く・握る・しゃがむ。裏を返せば、ランに費やしていた時間の一部をここへ回すだけで、16週間あれば十分に変わります。種目ごとの動作はスレッドプッシュ攻略、ファーマーズキャリー攻略、ウォールボール攻略にまとめています。

マラソン経験者の強みと穴
マラソン経験者の強みと穴

16週間の4フェーズ設計

フェーズ 週 目的 走る量 筋力・種目
第1 筋力導入 1〜6週 押す・引く・握る・しゃがむを作る 普段の6〜7割 筋力週2回・種目の動作習得週1回
第2 種目特異 7〜11週 種目を全量で終えられるようにする 普段の8割 種目週2回・ブリック週1回
第3 レース特異 12〜14週 本番の並びで通す 普段並み ブリック週2回・通し1回
第4 調整 15〜16週 疲労を抜く 量を落とし強度を残す 種目は軽く短く

この配分の要点は、第1フェーズで走行距離を意図的に落とすことです。ランナーは走る量を減らすことに強い抵抗がありますが、有酸素の土台は6週間では大きく失われません。一方で筋力は、走る疲労が残ったままでは入りません。ここを我慢できるかどうかが16週間プランの成否を決めます。

16週間の4フェーズ
16週間の4フェーズ

第1フェーズ(1〜6週)の週の型

  1. 筋力A(週の前半): スクワット系、押す系(フロアプレスやショルダープレス)、ファーマーズキャリーの3種目を各3〜4セット。重さよりフォームが崩れない範囲で最後まで持てることを優先します
  2. 筋力B(週の後半): ヒンジ系(デッドリフト系)、引く系(ローイング動作・懸垂系)、ランジを各3〜4セット
  3. 有酸素の維持走: 会話ができるペースで40〜60分を週2回。距離は普段の6〜7割に抑えます
  4. 種目の動作習得: ウォールボールとバーピーブロードジャンプを、回数を追わずにフォームだけ確認する日を週1回
  5. 完全休養: 週1日は入れます

この6週間で追うべき数字は1つだけです。ファーマーズキャリーの重量で200mを止まらずに歩けるか。 グリップは最も伸びが遅く、最も当日効きます。伸び方の管理には心拍ゾーンの使い方を併用すると、走りの強度が上がりすぎるのを防げます。

第2フェーズ(7〜11週)の週の型

ここから種目を全量で扱い、ランと接続し始めます。

  1. 種目の全量セッション(週2回): ウォールボール100回、サンドバッグランジ100m、スレッド4本といった単位で、分割せずに終える練習に切り替えます
  2. ブリック(週1回): 1kmのラン→種目1つ→1kmのラン、を3〜4セット。ここで初めて「疲れた脚で走る」感覚を作ります
  3. インターバル(週1回): 1km×4〜6本。設定は目標タイムから逆算した1kmのペース
  4. 維持走(週1回): 40〜60分
  5. 筋力(週1回): 第1フェーズの内容を1回に圧縮して維持

第2フェーズで走行距離を普段の8割まで戻します。ランの落ち幅を減らす練習はランニングトレーニング、1kmの刻み方は1kmラン攻略に詳しく書いています。

第3フェーズ(12〜14週)と通し練習

本番の並び順で組み立てます。種目の順番は固定で、スキーエルグ、スレッドプッシュ、スレッドプル、バーピーブロードジャンプ、ローイング、ファーマーズキャリー、サンドバッグランジ、ウォールボールの順です。

  • ハーフ通し(12週・13週): 4セット分(ラン4km+種目4つ)を本番の順で通す
  • フル通し(14週に1回だけ): 8セットすべて。ここで出たタイムが本番の現実的な見込みになります
  • 移行の練習: 種目からランへ出るときに歩かない。ここは合計で数分の差になります

フル通しは1回で十分です。2回やると回復に食われて、調整期に疲労を持ち込みます。 ROXZONEの動き方はROXZONE攻略を参照してください。

なお公式ルールブックには、走路が内側のファストレーンと外側のランニングレーンに分かれており、キロ4分より速いペースの人はファストレーンを使うと定められています。自分がどちらになるかを通し練習の時点で把握しておくと、当日の動線で迷いません。

8kmは「8km走」ではない

ここがマラソン経験者にとって最も切り替えの要る部分です。HYROXのランは1kmが8本で、あいだに毎回種目が入ります。連続した8kmを走る競技ではありません。

項目 フルマラソンの走り HYROXの走り
1本の長さ 連続 1kmで区切られる
区間の間 なし 種目1つと移動が入る
ペース 一定に保つ 落ち幅を小さくすることが目的
脚の状態 徐々に疲れる 種目ごとに違う疲れ方をする
練習の主眼 距離を踏む 疲れた状態で同じペースに戻す

実務的な意味は3つあります。

  1. 長い距離走の優先度は下がる: 30km走を積む必要はありません。1km×6本のインターバルのほうが直接的です
  2. 種目ごとに脚の疲れ方が変わる: サンドバッグランジの直後とスキーエルグの直後では、同じ1kmでも走り出しが別物です。ブリック練習で種目を入れ替えて試してください
  3. 落ち幅が総合を決める: 非公式の集計や解説では、上位帯の特徴として最速区間と最遅区間の差が小さいことが繰り返し挙げられています。速い1本を作るより、8本目を1本目に近づけるほうが総合は縮みます

第2フェーズ以降のインターバルでは、設定タイムを守れたかどうかより「最後の1本が最初の1本からどれだけ落ちたか」を記録してください。マラソンの練習日誌とは見る指標が変わります。

第4フェーズ(15〜16週)の調整

最後の2週間は量を落として強度だけ残します。ここは独立した記事があるので、詳しくはテーパリングガイドに譲ります。原則だけ書くと次の3点です。

  1. 走行距離は落とすが、1kmの目標ペースの刺激は週1回だけ残す
  2. 新しい種目・新しい重量・新しいシューズを試さない
  3. 最終週は種目を「触る」程度に留め、回数を追わない

よくある失敗

  • 走行距離を落とせない: 第1フェーズで走りを維持したまま筋力を足すと、どちらも中途半端になります
  • スレッドを軽い重量でしか練習しない: 本番重量で押せるかは、本番重量でしか確認できません
  • ウォールボールを50回ずつに分けて練習し続ける: 100回を通す練習をしないと、当日つながりません
  • グリップを後回しにする: 最も伸びが遅い能力です。第1フェーズから毎週触ってください
  • ブリックを第1フェーズから入れる: 疲労が残って筋力セッションの質が落ちます
  • フル通しを何度もやる: 1回で十分です。回復に食われます
  • 痛みを我慢して継続する: 違和感が続く場合は練習を中断し、医療者の判断を仰いでください。ここは自己判断で押し切る場所ではありません

怪我を避ける組み方は怪我予防、レース後の戻し方はリカバリーガイドにまとめています。

FAQ

Q. フルマラソンが走れればHYROXは完走できますか?
A. ランは完走できても、種目でつまずくケースが多く報告されています。特にスレッドプッシュは長距離走が鍛えない押す力を要求します。走力より先に筋力を入れる計画にしてください。

Q. 16週間もかけずに12週間ではだめですか?
A. 12週間でも組めますが、筋力導入に使える期間が短くなります。スレッドやファーマーズキャリーに不安があるなら16週間、種目の経験がすでにあるなら12週間、という分け方が現実的です。

Q. 第1フェーズで本当に走る量を減らしてよいのですか?
A. 有酸素の土台は6週間で大きくは失われません。むしろ走る疲労を残したままだと筋力セッションの質が落ちます。ただし完全に止めるのではなく、普段の6〜7割の距離で維持走は続けてください。

Q. 週に何回トレーニングすればよいですか?
A. 第1フェーズは筋力2回・維持走2回・種目の動作習得1回・休養1日の週5回が目安です。第2フェーズ以降は種目2回・ブリック1回・インターバル1回・維持走1回・筋力1回になります。

Q. ジムにソリがない場合はどうすればよいですか?
A. 重量そのものを再現できなくても、押す動作と脚の伸展力は代替できます。ただし本番前に一度は実際のソリを扱っておくのが安全です。ソリのある施設は認定ジムの探し方を参考にしてください。

Q. 目標タイムはどう設定すればよいですか?
A. 初挑戦なら完走を目標にし、2回目以降はレベル別の目安から逆算してください。設定の考え方はタイム目安まとめにまとめています。数値は第三者集計による目安で、公式の基準ではありません。

Q. 通し練習は何回やるべきですか?
A. フル通しは本番の2週間前までに1回で十分です。ハーフ通しは第3フェーズで2回程度。回数を増やすと回復に時間を取られ、調整期に疲労が残ります。

参考にした情報源

本記事のプラン構成は公開情報と一般的なトレーニングの原則に基づく編集部の設計であり、公式が推奨する練習計画ではありません。重量・距離・レーン規定はシーズンごとに改定される場合があるため、出場前に公式の記載を確認してください。既往症がある場合や練習中に痛みが出た場合は、医療者に相談してください。

最終更新日: 2026年9月8日

当サイトはHYROX™の非公式ファンメディアです。HYROXはUpsolut Sports AGの商標です。

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